私が好きだったアニメの一つです。
龍ヶ嬢七々々の埋蔵金
鳳乃一真氏によるファミ通文庫に原作があるライトノベルで、ジャンルは学園モノっぽく見えますが、冒険活劇です。
2014年にアニメ化し、フジテレビ系列『ノイタミナ』にて全11話で放送されました。
当然ながらこの11話で物語は完結していません。
原作は全12巻まで発売し、アニメ化した巻は1~3巻ほどです。
私はアニメから観てこの作品を知りました。
ストーリー
父親と仲違いして勘当された八真重護(やまじゅうご)は人工学園島『七重島(ななえじま)』に移住した。
しかし新居となる安アパートには10年前に何者かに殺害されて地縛霊になった少女、龍ヶ嬢七々々(りゅうがじょうななな)が住み着いていた。
既に1年分の家賃を支払ってしまった重護はやむなく彼女と同棲をすることになる。
七々々は七重島を『誰でも願いが叶えられる島』として作り上げ、それを運営する天才学生集団『GREAT7』の創設者にしてメンバーの一人だった。
彼女は生前に世界各地に眠る不思議な力を持った秘宝を収集し、それらを七重島の到るところに隠していた。
この七々々が残した埋蔵金こと『七々々コレクション』を使って七々々を殺害した犯人見つけ出し、彼女を成仏させることを思いついた重護は、学園内にある七々々コレクションを探索・収集する部活『冒険部』に入部し、彼女の成仏のために七々々コレクションを集めていく。
龍ヶ嬢七々々の埋蔵金の魅力
余談ですが、あろうことか私は龍ヶ嬢七々々を4話ぐらいから観始めました。
この頃自宅の録画設備が不在だったので、一時期アニメが見れない時期が続いていました。
そうして録画設備が整って改めてアニメを録画し始めた頃が丁度5話目だったのです。どうせ途中から観ても話がわからんだろうし、どんなものかわかったらすぐに録画を切ろうと考えていました。
ところが!
このアニメ、5話目ぐらいから観ても普通に面白かったです!
物語がわかりやすい
この物語は端的に言うと宝探しゲームです。
島の各所に隠された宝の場所探しから始まり、次は隠された宝の部屋の謎解きです。
宝部屋には必ず宝を守る仕掛が備わっています。
謎を解いて扉を開けるものもあれば、身体能力で突破する仕掛けもあります。
仕掛けを抜けてゴールに行き着くと隠された宝こと七々々コレクションが手に入ります。
これは言うなればドラえもんの道具みたいな感じです。
やたら便利なものもあれば全然大したものでもないムラがある加減も良かったです。
そしてコレクションの内容は実際に入手してみないとわかりません。
だからやたら困難な仕掛けを攻略した挙げ句に大したものじゃなかったなんてこともありえます。
どんな仕掛けがあって、どんな効力を持つお宝なのかが興味を引き立ててくれます。
主人公に好感が持てる
学園が舞台だと主人公によくある『巻き込まれる』『常にだるそう、または空回りしやすい熱血漢』『異性に鈍感』『ハーレムアニメ』『俺TUEEEE』などイメージが定着しやすいと思いますが、この主人公、巻き込まれこそしますが、一方的に俺TUEEEEではなく、必要な時には熱く、そうでない時は好青年を演じているものの、キツネやタヌキのように上手く立ち回って、目的のためなら平気に仲間を欺くけれど、決して貶めるようなことはしない。
信用が置けないようで信用が置けるようなクセのあるキャラクター性がとても面白く、彼が水面下でどのような策謀を巡らせているのかがとても興味が湧きました。
チート要素は一切ない、ただしセコい手は躊躇なく使う!みたいな姿勢がかえって清々しいですw
仲間同士で出し抜き合う
一見、冒険部で仲間と協力し合って七々々コレクションを見つけ出そう!っていうイメージが浮かびますが、実際はそんな優しいものではありませんでした。
部としての活動をしながらも、見つけた七々々コレクションを自分で独占しようと仲間を出し抜き合う場面が出てきます。
本来は仲間として協力関係であるはずなんだけど、全員がライバル関係になり得る環境下で自分の目指す目標のために仲間を欺いて我先に七々々コレクションを手にしようとする駆け引きがこの作品を特に面白くしている魅力だと思います。
アニメ終了後
本作は11話でアニメが終了しましたが、放送中の段階で原作本は既に7巻まで発売していました。
アニメ最終話以降の続きがあまりにも気になったので、2期を期待していたのですが、放送終了後の公式ツイッターでは2期への言及はありませんでした。
むしろ続きは原作を読めと仰っています。
「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金」最終話いかがでしたでしょうか?スフィアさんの歌う最終話のEDは1番ではなく2番となっていました。そして、EDに登場したカットや、ED後の幕引きも気になりますね!その謎は原作小説でお楽しみください!! #nanana_tv
— TVアニメ「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金」公式 (@nanana_tv) June 19, 2014
当時は何故2期をやらないのか?と、疑問に思いました。
私を含めて多くのユーザーが2期を期待していましたが、結局私は辛坊たまらず公式に従って原作本を買い集めて読み始めました。
アニメ同様にテンポが良かったので、すらすらと読み進めましたw
アニメ以降の続きの話も読みました。
それどころか最終巻の12巻まで買って読みました。
そして私は原作を読み終えて結論付けました。
この作品の2期はもう無理だ…
ここから先はネタバレになってしまうので、まだバレて欲しくない人は以降は読まずに原作を買って読んでみるか、以前私が書いたステーキの焼き方の記事でも気晴らしに読んでもらえればと思いますw
ネタバレしちゃうよ?
【ネタバレ注意!】龍ヶ嬢七々々の埋蔵金2期が絶望的な理由
結論として、物語は悪い意味で想定外の方向へ転がり込んでいきます。
これをアニメで表現するのは難しいし、あまり良い印象を覚えない視聴者が多数出てくると思います。
私はアニメを見た限りの感想として、ストーリー、設定、登場人物の個性や人数などのバランスがとても良かった作品だと思っています。
ところがアニメ以降の話は以下のマイナスに思える要素が出始めました。
- 登場するキャラクターが一気に増える
- 冒険部が崩壊する
- 重護の一人戦争が始まる
-
物語は完結したけど完結していない
順を追って解説します。
登場するキャラクターが一気に増える
冒険部の面子の他に、七重島にある別の学園の勢力がライバルとして登場します。
まぁ、島内で七々々コレクションを探しているのは何も冒険部だけではないってことがわかる自然の流れではあると思います。
しかし面子がそこそこ多く、一部を除いたキャラの個性が乏しいため、新刊発売までの間で「あれ?こいつ誰だったけ?」って事がしばしばあります。
この他にもGREAT7の面々、元冒険部員、そしてまさかの重護の妹などが登場します。
これによって各場面がころころ変わってキャラの乱立が全体的に目立つようになります。
全員が全員物語に必要不可欠と言えるほどの説得力あるキャラでもないため、印象も薄くなってしまいがちでした。
中にはいつの間にか消えてしまっていたキャラもいました。
冒険部が崩壊する
これが最も致命的でした。
行動力に優れた重護、推理力に優れた天災を前にした部長の唯我一心は二人の突出した才能に押されてしまい、ついには後を重護に託して冒険部を放棄してしまいます。
当然彼が抜けたことで一心に組みしていた副部長の茨夕と部員の徒然景虎も冒険部を去ります。
以後は完全な脇役のポジションです。
冒険部も冒険部で重護と天災、ダルクの3人だけになります。
文字通り完全に部活崩壊です。以後は冒険部としての活動も完全に消滅します。
重護は重護、天災は天災でダルクを引き連れながら各々でやるべきことをやっていきつつ、時に協力し合うみたいな関係になります。
アニメや原作序盤のレギュラーメンバーである冒険部を崩壊させてしまったのはアニメ続編を困難にする大きな痛手になったと思います。
根っからの原作読者はともかく、アニメ発のユーザーはすっかり冒険部のメンバーとその関係性に関心と感情移入をしています。
前述で本作の魅力として紹介した『仲間同士で出し抜き合う』が無くなってしまうのです。
そしてライバル勢力であった第七高等部やその他の新規参入キャラが物語に定着し始める頃には茨と景虎はいつの間にか消えてるし、一心に関しては七々々コレクション収拾における禁忌(ルール違反)を犯してしまい、以後は七々々コレクションを島の各地に隠して管理する組織『レプラコーン』を取り仕切るネガカナの操り人形になります。
最後は本人も気付かないままレプラコーンの使いっ走りにされ続けて物語から姿を消しました。
この後味の悪い粗末な扱いはアニメ化にするにはちょっと厳しいものを感じました。
重護の一人戦争が始まる
冒険部が崩壊してから龍ヶ嬢七々々の埋蔵金は一気に魅力を失いました。
物語は冒険よりも七々々コレクションの奪い合いに変わり、重護はあの手この手で七々々を殺害した犯人探しに奔走します。
協力者はいるけど、常にそばにいるというわけではなく、重護と同じく裏方仕事ばかりです。
重護自身も単独行動で裏方作業に徹する場面が多いので、読者も彼が一体何を企んでいるのかわかりません。
本質としては彼の方向性は決してブレてはいませんが、友情や成長などの物語を面白くしていく要素が弱くなってしまい、正直に言って、つまらなくなりました。
本当は冒険部は崩壊させずに部として協力関係を維持しながらも時に出し抜き合って置けるに置けない信頼関係の中で互いの成長に繋げていって欲しいと思いました。
物語は完結したけど完結していない
本作は形式的には完結していますが、内容としては『俺たちの戦いはこれからだ』的な終わり方です。
確かに謎だった箇所は明かされましたが、その後どうなるのか?ってところで一区切りという形で終わってしまいました。
これは恐らく作者が求めるべき完結への方向性を見失ったのではないかと考えています。
あとがきで今はここで一区切りにして、いつかちゃんと完結させたいですといった旨を書いています。
しかしこれも正直絶望的です。
物語って話が進んでいく内にキャラが成長し、読者もその成長を見守っていくような立ち位置になります。
しかし冒険部が崩壊してからの本作は様々なキャラが乱立し、キャラ一人一人の話のボリュームが薄くなり、感情移入はもちろん、成長を見守っていく場面も少ないです。
重護も目的のために四六時中縦横無尽に暗躍しているため、ただでさえ外に出れない地縛霊の七々々との交流場面も減ってるし、天災との絡みも冒険部崩壊後からは弱くなっていきました。
つまるところ、作者や読者の手元に残った成長を見守ってきたキャラが重護と天災ぐらいしか残っていません。
その重護と天災の関係性すらも薄れてきているのです。
そんな中でこの物語の続きを面白く書くのは非常に難しいと思います。
他のキャラはその時々の一件での利害一致からなる一期一会の協力関係でしかないため、友情や信頼ある協調性に乏しく、感情移入がし難いです。
仲間やライバルがいなくなってしまって各々が一匹狼状態です。
新たな脅威やライバルを登場させるにしても、キャラを増やし過ぎてしまったため、これ以上乱立させると余計に話がペラくなってしまいます。
物語の始まりの頃のバランスがとても良かっただけにこのような結末を迎えたことは非常に残念だと思います。
なのでこれらを踏まえて、私は原作の続き及びアニメの続編が絶望的であると判断しています。
しかしながらアニメ版の完成度は非常に高く、絵も綺麗で声優さんの配役も絶妙で話もテンポが良くて最後まで楽しむことが出来ます!
特に七々々を演じる田辺留依さんの天真爛漫な感じの声がめっちゃいいですw
これだけでも十分に観る価値はあります!
残念な事情はありますが、おすすめできる面白いアニメです!
ご縁があれば是非ご覧になってみてください!
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